主な対象疾患Conditions

多発性骨髄腫Multiple Myeloma

血球成分のうち赤血球は酸素を体のすみずみまで運搬する働き、白血球は病原菌などの異物と闘う免疫機能を発揮する働き、血小板は出血を止める働きを持ちますが、これらの血球成分はすべて「造血幹細胞」と呼ばれる1種類の細胞から枝分かれをして成熟していきます。
多発性骨髄腫は、造血幹細胞から枝分かれしてできたリンパ球の一種「形質細胞」のがんです。

多発性骨髄腫の症状

形質細胞はがんにかかると「骨髄腫細胞」という、異物と闘う能力のない細胞に変化して、多発性骨髄腫を起こします。
貧血による息切れやだるさ、白血球の数が減ることで起こる感染症、血小板が減少することによる出血などが起こります。感染症は肺炎や、膀胱炎などの尿路感染症も含まれます。ほかに症状としては浮腫、頭痛、見えにくいなどの眼の症状、神経障害、口渇意識障害、肋骨の痛み、下肢の麻痺などが挙げられます。

多発性骨髄腫の治療

◆  化学療法
患者さんの状態、副作用の出方などを考慮し、分子標的薬、抗がん剤、ステロイドなどの医薬品を組み合わせて治療を行います。
◆  放射線治療
骨髄腫は一般的に放射線への感受性が高いため、よく行われます。がん腫瘤の縮小や消失のため、また骨の痛みを軽減するためも行います。
◆  造血幹細胞移植
化学療法や放射線療法で、がんを壊滅できるほどの治療をした後、造血幹細胞を移植することで、低下した骨髄の造血機能を回させる治療です。

白血病Leukemia

白血球性のがんで、急性白血病には、がん化した細胞が急速に増殖する、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫、急性前骨髄球性白血病など。慢性白血病には、がん化した細胞がゆっくりと増殖する、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫など。その他として骨髄異形成症候群、成人T細胞白血病/リンパ腫など、多くの病態があります。

白血病の症状

急性白血病は、造血機能の障害による貧血で、息切れ・動悸・倦怠感など。白血球の減少による感染で発熱。血小板減少による出で、あざ・出血斑・鼻血・歯ぐきからの出血が認められます。また白血病の細胞が臓器に浸潤することで肝臓や脾臓が腫れ、腹部膨満感・腫瘤・痛みなど。歯ぐきの腫れや痛み。腰痛・関節痛、頭痛など。リンパ性の場合は、それに加え頸部などのリンパ節のれが症状として現れます。
慢性白血病の場合、ゆっくりと進行するため、初期の段階ではほとんど症状がありません。症状がある場合は、倦怠感・食欲不振微熱と寝汗、体重減少など。病気が進行すると、慢性骨髄性白血病では貧血・無気力・寝汗・体重減少・腹部膨満感などが現れす。慢性リンパ性白血病や小リンパ球性リンパ腫は、首やわきの下、脚の付け根など、リンパ節の多いところに「しこり」が現れ数週から数か月かけて大きくなって行きます。慢性リンパ性白血病では、自分の赤血球を破壊する現象が起こり、重い貧血となるともあります。

白血病の治療

◆  急性骨髄性白血病
化学療法、分化誘導療法、分子標的治療、造血幹細胞移植などが行われますが、若年者と高齢者、病気の進行度合いや体力によて治療法や、どのレベルまで治すかという治療目標も検討されます。
◆  急性リンパ性白血病/リンパ芽球性リンパ腫
骨髄腫は一般的に放射線への感受性が高いため、よく行われます。がん腫瘤の縮小や消失のため、また骨の痛みを軽減するためも行います。

リンパ腫  Lymphoma

白血球の一種であるリンパ球が、がん化する病気です。大きくはホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されますが、日本人はほとんどが非ホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫は悪性度により3段階に分類されます。

1.低悪性度リンパ腫
軽い場合は積極的な治療をせず経過観察も可能。年単位でゆるやかに進行します。濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫など。
2.中悪性度リンパ腫
すぐに腫瘍に対する治療が必要になります。週~月単位で進行します。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫など。
3.高悪性度リンパ腫
診断された時点で、ただちに緊急入院が必要なケースもあります。日~週単位で進行します。入院を必要とする強力な化学療法を行います。バーキットリンパ腫やリンパ芽球性リンパ腫など。

リンパ腫の症状

最初は首やワキの下、脚の付け根などリンパ節の多いところに、痛みのないしこりとして現れることが多くあります。数週間からか月をかけ、縮小することなく大きくなり、やがてしこりや腫れは全身に広がり、進行するとともに全身的に症状がみられるようなります。全身症状には発熱、体重減少、顕著な寝汗を伴うことがあります。体の痒みや発疹、腫瘤(しゅりゅう)によって気道血管、脊髄などの臓器が圧迫されると、気道閉塞、血流障害、麻痺などの症状があらわれ、緊急で治療が必要な場合もあります。

リンパ腫の治療

非ホジキンリンパ腫には濾胞性リンパ腫、MALTリンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大胞型B細胞リンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、節外性NK/T細胞リンパ腫・鼻型、皮膚のリンパ腫などがり、各々Ⅰ期からⅣ期までの病期があります。
中心的な治療法は抗がん剤による化学療法や分子標的療法などの薬物療法です。放射線療法はⅠ期やⅡ期に単独で、または化学法との併用で行います。高エネルギーのX線を照射してがん細胞を破壊し、消滅させたり小さくさせます。
造血幹細胞移植は、大量の化学療法や全身への放射線療法などを実施した後、骨髄機能の回復を目標とし、事前に採取・保存し造血幹細胞を投与します。ゆっくりと進行する病型と判断された場合、無治療で経過観察をする場合もあります。

再生不良性貧血Plastic Anemia

白血球、赤血球、血小板と、すべての血球が減少する病気です。貧血と血小板減少のみで、白血球数は正常に近い状態に維持される重症度の低いものもありますが、一般に再生不良性貧血で減少するのは、おもに白血球のうちの好中球です。骨髄中の造血幹細胞が傷害され、そのため血球の産生が阻害されることにより起こる貧血です。

再生不良性貧血の症状

血球の減少に応じて症状が起こります。赤血球が減少すると脳・筋肉・心臓などを中心とする全身に酸素欠乏の症状が起こります脳の酸素欠乏でめまい・頭痛が、心筋の酸素欠乏で狭心症のような胸痛が起こることもあります。筋肉の酸素欠乏で身体がだるくったり、疲れやすくなったりします。このような酸素欠乏をカバーしようと、呼吸や心拍数が速くなり、それを息切れや動悸と感ることがあります。顔色は青白くなってきます。
白血球のうち好中球はおもに細菌感染を防ぐ役割を担当します。このため好中球が減ると、敗血症のような重い細菌感染症をおこやすくなります。
止血を受け持つ血小板が少なくなると、皮膚の点状出血、紫斑、鼻出血、歯肉出血を起こしやすくなります。さらに進むと、眼底脳出血、血尿、下血などを起こします。

再生不良性貧血の治療

ステージ1の軽症から、ステージ5の最重症まで重症度に応じて、免疫抑制療法、骨髄移植、たんぱく同化ステロイド療法、支療法などを行います。
免疫抑制療法は、造血幹細胞を傷害しているリンパ球を抑制して造血機能を回復させる治療法です。
骨髄移植は、他の人の骨髄細胞を患者さんに移植する治療法です。白血球の型の合った近親者あるいは骨髄バンクの提供者から髄細胞をもらい点滴で移植します。
たんぱく同化ステロイドは、腎臓のホルモンを出させて赤血球を産生をさせるとともに、造血幹細胞に作用して増殖を促す目的実施されます。
支持療法は根本的な治療方法ではなく、症状を改善し、生命を維持する目的で実施します。赤血球や血小板を輸血したり、白血の仲間である好中球を増やすためのホルモンを投与するなどの治療です。
ステージ1~2の比較的軽症例では、汎血球減少が進行しない場合、多くは無治療での経過観察となります。これは自然に回復る例があるためです。
ステージ3~5の重症例では、薬物による免疫抑制療法か、骨髄移植を行います。

二次性貧血Secondary Anemia

続発性貧血とも呼ばれ、血液疾患以外の基礎疾患が原因で起こる貧血を指します。基礎疾患としては、慢性感染症、膠原病、悪性腫瘍、腎臓病、肝臓病、内分泌疾患のほか、妊娠や薬物が原因のこともあります。
高齢者にみられる軽度から中等度の貧血を診断すると、消化器系のがんを基礎疾患とする二次性貧血であることに多く遭遇します。

二次性貧血の症状

一時的に起こる急性と、継続的に起こる慢性の貧血があり、症状としては動悸・息切れ・易疲労感・全身の倦怠感・頭重感・顔面白など、一般的な貧血と同様です。それに加えて基礎疾患の症状を伴うことも多くみられます。

二次性貧血の治療

血液検査や生化学検査を行い、一般的な鉄欠乏性貧血と異なる結果が得られたら、スクリーニング検査や骨髄穿刺・骨髄生検なで基礎疾患を絞り込み確定します。
二次性貧血の治療は、基本的に基礎疾患の治療が中心になります。
鉄欠乏が認められるときは鉄分補給の錠剤を用います。状態に応じて葉酸やビタミンB12の投与も行います。腎性貧血には造血ルモンの注射を行うこともあります。貧血が重度の場合は輸血も検討されます。

血液凝固障害Blood Clotting Disorders

血液が固まる仕組みである血液凝固系の病気。遺伝性のものと、それ以外のものがあります。血液の凝固を助け、出血を止めるためのタンパク質(凝固因子)を充分に作ることができないため、異常な出血を起こします。凝固因子はすべて肝臓で作られますが、凝固因子のいくつかを作るにはビタミンKを必要とします。
遺伝性の凝固障害で最も一般的なのは血友病です。遺伝性以外の凝固障害には、播種性血管内凝固症候群(DIC)、ビタミンK欠乏症、重い肝臓疾患(肝硬変、重度の肝炎、急性妊娠性脂肪肝など)、循環抗凝固因子による血液凝固障害があります。

血液凝固障害の症状

血友病の主な症状は過剰な出血です。出血の箇所は関節内、筋肉内、腹部や頭部内、傷口から、歯科治療時、手術箇所などです。術や抜歯のとき予想以上の出血が見られる程度(軽度)から、わずかな傷でも大出血をきたす(重度)ものまであります。
播種性血管内凝固症候群(DIC)は、血液が凝固してできる小さな血栓が全身に現れ、細い血管を詰まらせる病気です。このた血液凝固因子と血小板を使い果たす結果となり、過度の出血を起こします。
ビタミンK欠乏症の大半は、抗生物質投与中の患者さんに起こります。抗生物質を投与すると、ビタミンKを産生する腸内細菌が滅するのが原因です。患者さんの食事量が低下してビタミンKの摂取量が減ったり、閉塞性黄疸で胆汁が腸内に供給されず、ビタンKの吸収ができなくなることも一因となります。

血液凝固障害の治療

血友病の治療は、欠乏している血液凝固因子を特定して補充します。
播種性血管内凝固症候群(DIC)は、妊娠や出産、感染、がんなど、病気の原因を特定し、治療します。原因を取り除くこと凝固は解決します。
ビタミンK欠乏症は、ビタミンKの注射による投与または抗凝固薬による治療を行うのが一般的です。