消化器センター外科のご案内
【基本方針】
消化器センター は内科部門 (消化器内科) と協力して、消化器領域の診療機能の向上を目指しています。
腹痛を始めとした消化器疾患の診療には、内科・外科の区別なく積極的に取り組んでいく所存です。
【受け入れ対象疾患】
- ● 食道疾患(食道癌/食道裂孔ヘルニア/食道アカラジアなど)
- ● 胃・十二指腸疾患(腹膜炎/胃癌/十二指腸潰瘍穿孔/十二指腸癌など)
- ● 肝臓・胆 嚢・胆管・膵臓疾患(肝臓癌/転移性肝腫瘍/肝門部胆管癌/肝嚢胞/胆嚢癌/胆石症/急性胆嚢炎/胆管癌/総胆管結石/膵臓癌/慢性膵炎など)
- ● 腸疾患(急性虫垂炎/大腸癌)
- ● その他疾患(副腎腫瘍 /脾臓機能亢進症)
外科診療
- ●食道・胃腸外科
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食道癌治療にはガイドラインに基づいた術前化学療法を積極的に導入しています。胃癌に対する胃切除手術では、厳格に適応基準を決めて、当院の得意とする腹腔鏡補助下胃切除術を導入しています。
食道・胃外科では下記の疾患に対する診断、治療、セカンドオピニオンを行っています。 - ●大腸・肛門外科
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当院では大腸癌のおよそ50%は腹腔鏡下大腸切除術を行っています。痔疾患に対しては手術的治療以外にも、専門家による局所療法(ジオン注射)を積極的に行っています。
- ●肝臓・胆のう・膵臓外科
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開腹による肝切除術、膵切除術(膵頭十二指腸切除術・膵体尾部切除術)には積極的に取り組み、腹腔鏡下胆嚢切除術・腹腔鏡下総胆管切開切石術は年間100例を超えています。
- ●内視鏡外科
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小さな傷の手術 —からだに優しい内視鏡外科手術—
消化管<食道~胃~十二指腸~大腸~肛門>の腫瘍(おでき・ポリー プとも表現されることがあり、良性と悪性≒癌があります)の治療は、基本的には完全に切除することです。悪性の場合には抗癌剤の追加投与が必要になること があります。さて、腫瘍の切除には、
(1)内視鏡治療:胃・大腸カメラを使用して粘膜病変を切除します(開腹はしません)。
(2)内視鏡外科手術(腹腔鏡下手術とも いう):腹部に4~6個の小さな穴を開けて、そこからテレビカメラ(これを腹腔鏡という)と細長い手術器具を挿入します。腹腔内をモニターで観察しながら 病変部を切除します。小さな傷ですみ、手術後の痛みも少ない利点があります。
(3)開腹手術(従来の手術法です):20cm前後の傷で、腹腔内に手を入れての手術です。
当院外科では、病気の進行程度や患者様の全身状態などを考慮して、出来るだけ侵襲の少ない(身体に負担の少ない)、(1)や(2)の治療方法を選択しています。
外科 標榜科
- ●食道・胃腸外科
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食道・胃外科では下記の疾患に対する診断、治療、セカンドオピニオンを行っています。
〈対象疾患と治療〉
Ⅰ.食道:食道ガン、食道裂孔ヘルニア、食道アカラシア、食道良性腫瘍(平滑筋腫、ポリープ)、特発性食道破裂、食道異物、食道狭窄◎食道ガンでは術前補助化学療法、手術療法はもちろん、放射線化学療法(他院と連携し、再発時の治療にも行います。)にも対応しています。
◎食道良性疾患では積極的に鏡視下手術を取り入れています。Ⅱ.胃:胃ガン、胃粘膜下腫瘍、胃悪性リンパ腫、胃十二指腸穿孔
◎胃ガン:早期胃ガンでは腹腔鏡補助下手術や機能温存手術(噴門側胃切除など)を積極的に導入しています。
進行胃がんに対しては進行度に合わせ、手術だけではなく術前、術後(補助)化学療法も積極的に行っています。腹膜播種に対する腹腔内抗がん剤注入療法なども導入しています。
◎胃粘膜下腫瘍に関しても腹腔鏡下手術を積極的に行っています。
◎上部消化管穿孔なども小さな傷の手術で緊急対応し早期の退院に取り組んでいます。
上記疾患でお困りの方は、まずは是非ご相談ください。 - ● 大腸・肛門外科
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当院外科で扱う大腸疾患としては、大腸癌、大腸憩室穿孔、大腸軸捻転、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎、クローン病)等があります。このうち最も多い大腸癌に対する治療方法を、当院での特徴を含めて説明します。大腸癌は、その進み方で治療手段が大きく変わってきます。
Ⅰ.大腸内視鏡下での治療
非常に早期で発見される大腸癌は、大腸内視鏡だけで治療することができます。この様な早期大腸癌は、ほとんど症状がないため、多くの方が大腸癌検診の便鮮血検査を受けていただき、さらに大腸内視鏡による精密検査で発見することが必要です。当院では消化器内科で、このような大腸内視鏡検査と内視鏡下治療を積極的に行っています。
〈手術〉
◎ 腹腔鏡下手術
当院の外科では、この腹腔鏡下大腸癌手術を積極的に行っています。この手術は、傷を小さくして(約5cm)、患者さんの身体的、精神的な負担をなるべく少なくしようとする方法です。開腹手術と比べると手術後の回復が早く、手術の翌日か ら歩くことができ、手術後、約1週間で退院することができます。しかし、この手術には多くの経験を必要とするため、一般的な病院では一部の早期大腸癌患者さんに限って行われています。当院では、大腸手術だけでなく、胆道手術、虫垂切除術、脾臓摘出術など、腹腔鏡下手術の経験が豊富にある外科スタッフがそろっており、進行癌、直腸癌を含めた大多数の大腸癌患者に対して、腹腔鏡下手術をお勧めしています。
◎ 開腹手術
何度も開腹手術を受けたことがある、高度な進行癌、肛門に近い直腸癌、などの患者さんには開腹手術を受けていただきます。大腸癌の転移、再発
〈手術〉
大腸癌の特徴として、進行癌の場合、肝臓に転移することがよくあります。当院外科では、この様な肝臓に転移した患者さんに対して、抗癌剤治療と組み合わせながら、積極的に肝臓切除手術を行っています。〈抗癌剤治療〉
現在、大腸癌に対する抗癌剤治療の進歩はめざましく、毎年のように新しい治療法が現れています。当院でも大腸癌再発患者さんに対して、オキザリプラチン、イリノテカン、などの抗癌剤を用いた新しい抗癌剤治療を、入院、または外来通院で行っています。また、再発予防のための、補助抗癌剤治療は、飲み薬として外来通院で行っています。
専門外来
【鼠径(そけい)ヘルニア専門外来】
- ● ヘルニアとは
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※ここで言うヘルニアとは昔から“脱腸”と言われてきた疾患で、整形外科疾患の腰椎 ヘルニアとは異なります。
ヘルニア(脱腸)は腹壁(腹筋・腹膜)の一部が弱くなり、そこから内臓が皮膚の下に飛び出てしまう病気です。一番多いのが鼠径部(下腹部、足のつけ根)に起きる鼠径(そけい)ヘルニアで、最初はピンポン球くらいの皮膚の膨らみで気づく方が多いようです。成人の場合、自然に治る見込みはほとんどなく放っておくと大きくなります。手で押したり腹部の安静で内臓が戻ると治ったようにみえますが、またすぐに膨らんできます。飛び出た内臓が全く戻らない状態(これを嵌頓(かんとん)と言います)に至ると腸閉塞や腹膜炎を起こし生命にかかわることがあります。早く治療を始めるほど短い期間で完治しますので、ヘルニアかな?と思ったら、できるだけ早く専門の病院にかかり適切な診断と治療を受けることが大事です。
鼠径部ヘルニアの種類
内臓が飛び出た場所によって詳細な分類がなされています。
(日本ヘルニア学会 鼠径部 ヘルニアの分類)○外鼠径ヘルニア
○内鼠径ヘルニア
○大腿ヘルニアヘルニアが左右に同時に発生していることがあり、これを見落とさず確実に全てを治すことが大事です。
鼠径部以外のヘルニア
腹壁には鼠径部以外にも弱くなりやすい場所があり、他にもいろいろなヘルニアがあります。いずれも治療の原則は手術です。
当院では病状に応じて可能なかぎり小さな傷の腹腔鏡下手術を行います。○閉鎖孔ヘルニア
骨盤にあいた隙間(閉鎖孔)に内臓が飛び出る病気です。体表から分かりづらく多くは嵌頓状態で強い腹痛、嘔吐で発症し緊急手術が必要になります。太ももや臀部の違和感、痛みで発症することもあります。
○腹壁瘢痕ヘルニア
過去に開腹手術を受けた方の傷跡に発症するヘルニアです。痛み、違和感、吐き気、便秘などの症状があれば治療の対象になります。
○臍ヘルニア
おへそに起きるヘルニアで、いわゆる「でべそ」です。生まれて間もない赤ちゃんにみられますが成人に起きることがあります。〈ヘルニアの治療〉
ヘルニアの治療は飛び出た内臓を元に戻し、さらに腹壁の弱い部分を補強することで完了します。これを同時に行う手術治療が原則です。補強のやり方によってたくさんの手術法がありますが、患者さんの病状に応じて一番適切な方法を選ぶことが大事です。私たちが手術法を選ぶ際に重視することは、長期間にわたって再発が少ないこと、治療後の痛みや違和感が小さく身体への負担が軽いこと、短期間で日常生活に復帰できることです。鼠径部ヘルニア手術
腹腔鏡を使う方法と鼠径部の皮膚を切開する方法があります。手術後ずっと再発させないためには、外・内鼠径ヘルニア・大腿ヘルニアが発生する鼠径部全体(Myopectineal orifice)を同時に補強することが大事だと考えています。このために「メッシュ」といわれる人工の網状膜を腹壁に埋め込み補強します。できるだけ軽くて網目が大きく(ライトウェイト・ラージポア)、羽毛のようなメッシュを腹壁の深いところに埋め込むことで術後の痛み、違和感を軽減させます。
◎ 腹腔鏡下手術(TAPP[タップ]法,ラパヘル):数mmの傷からお腹の中にカメラを入れヘルニアの診断と治療を行います。欧米で最も推奨される術式のひとつで技術の進歩とともに日本でも普及しはじめています。全身麻酔で行います。左右にヘルニアがあっても全て同時に診断し治療することが可能です。ライトウェイト・ラージポアのメッシュを腹壁の最深部に埋め込むので痛み、違和感が少なくすぐに日常生活に復帰できます。
◎ 鼠径部切開手術:鼠径部を数cm切開しメッシュを埋め込む方法です。下半身麻酔(腰椎、硬膜外麻酔)や局所麻酔で行います。病状によってKugel(クーゲル)法、UHS法、UPP法、Mesh Plug(メッシュプラグ)法、メッシュを使わない従来法といった多種類の術式から最適な方法を選択します。
当院ではヘルニア手術および消化器全般に亘る腹腔鏡下手術の経験が豊富な外科医と麻酔科医がタッグを組むことで患者さん一人一人に最適な方法を選ぶことができます。初診から治療完了まで
○初診
外科外来を受診していただきます。
他院で手術を勧められたが他の手術法も考えたい方、他院で手術を受けたが再発してしまったという方もお気軽にお越しください。
その日のうちに、病状と全身状態のチェック(レントゲンやCT検査、血液検査、心電図、肺活量検査など)を行って最適な手術法と手術日を決めます。
日程は可能なかぎりお仕事や生活に配慮して決めますので遠慮なくご相談ください。
○入院
手術前日に入院していただき手術に向けて準備をします。外科担当医、麻酔科医から手術の詳しい説明があります。
○手術
手術時間は術式と病状によって変わります。通常は1か所のヘルニアにつき40~80分程度です。手術後2時間ほどベッドで安静にしていただき、以後は歩いたり軽食を摂ることができます(術式、麻酔法により変わります)。
○退院
手術翌日以後の診察で問題がなければ退院許可が出ます。通常は手術後1~3日目です。退院後は痛みが強くならない範囲で日常生活、お仕事に復帰してください。シャワー浴も可能です。
○再診
手術から約1週間後に予約外来を受診していただき傷の状態をチェックします。
傷は特殊な縫合をしますので抜糸は不要です。異常がなければ日常生活、お仕事に完全復帰です。入浴も可能となります。再発予防のため術後2週間程度は傷に過度の負担がかかる本格的なスポーツ、重作業はお控えください。手術から1~6か月後にもう一度受診していただき傷の治り具合、再発の有無をチェックします。
鼠径ヘルニア手術は全国で年間およそ10万件行われており、いろいろな手術法や新しい形状・素材のメッシュが開発されています。そのなかで患者さん一人一人の病状に一番合う方法を選ぶことが大事です。
病状が軽いうちに受診していただくとより選択肢が広がります。
最新の手術法に精通した当院ヘルニア専門外来へのお越しをお待ちしております。